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私が緊急事態を宣言した”あの日”

身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂
By 吉田松陰

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

私は6月生まれの双子座である。空に輝く双子座にはポルックスと呼ばれる星がある。 その直径は地球の約873倍、太陽の約8倍ある大きな星だ。私はこの星に見合う大きな度量を持っていたいと思っている。 

 

“あの日“、私は自らの度量を試されることになる。

それは4年前の家族キャンプだ。その日は新しく備品を買い込み家族みんなが楽しみにしていたキャンプだった。バーベキューをしたり、綺麗な星を見ながら、夜遅くまで語りあった。極上の時間だった。あの事件が起こるまでは。

 

就寝となり、テントの中で5人が肩を寄せて寝袋に入った。

数時間たった。小学生の息子が「お腹が痛いっ」と言い出した。その瞬間だった。大量のゲロが放出された。懐中電灯を灯す。辺り一面ゲロの海だった。信じられない光景だった。みんな冷静ではいれなかった。怒号が飛ぶ。1対4の構図だ。息子は孤立して泣いていた。

 

「アカン。家族がバラバラになる。」私は息子に寝返った。ここで『緊急事態の宣言』となるが、実際に宣言している余裕はなかった。一刻を争った。

「こんな時に自分のことばかり考えるなっ。悪口を禁止。自分が今出来ることをしなさい。」と叫び上げた。そして、「パパにまずティッシュを取りなさい」と言った。資源の無駄を排除しようというペーパーレス視点はなかった。ペーパーレス・レスだった。ショベルカーの様に拭き上げた。笑いが起こった。事態は改善した。

 

人生は選択の連続だ。 朝の靴下選びから、何の仕事から始めるか、大概の選択は間違ってもよい。だが、人生には“ここぞ”という選択がある。そこは間違ってはいけない。時にはポルックスばりの大きな度量を要求される選択があるが、そこは間違ってはいけない。致命傷になることがあるからだ。

 

星を見上げれば“あの日”のことを思い出す。あそこにオリオン座が見える。オリオン座には、リゲル、ベテルギウスという星がある。リゲルは、ポルックスの約8倍、ベテルギウスは、ポルックスの約81倍の大きさだ。実に大きい。小さく見えるのは遠いからだ。

この先、ベテルギウスばりの大きな度量を発揮することがない人生を願う。 そして、皆さまにもその様なことがない様、心から願う。

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最後までお読み頂きありがとうございました。
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